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ヒナコの伝言板。

ヒナコの伝言板。

vol.5

「ねえ、遼?今日の帰りカラオケ行こうよ!!
ほら、こないだ話したLAXの練習に。」

HRが終わり、生徒たちが一斉に帰る準備をはじめる。
遼の前の席の麻美子が振り返っていった。

「え?今日?」
「そう。なんか用事あるの?」
「んー、別にない・・・と思う・・・。」
「じゃあ決まりね。菜々ー、帰るよー!!」

菜々があわててかばんをもって二人を追っかけて三人は駅の近くのカラオケに向かった。その途中、いつも通るお城(おじょう:城華学園)の前の桜並木までやってきてふいに菜々が口を開いた。

「そういえばはるちゃん、まみちゃん、お城の和泉淳君って知ってる?うちらとタメの。」

どきっ!!!どうして淳君の名前が・・・。

「知ってる、知ってる!!」

麻美子の大声で遼は心臓が止まりそうなほど驚いた。

「和泉淳ってさー、すっごく頭良くて、お城でもトップクラスでしょ?そんでもってバンドやっててカッコいいんでしょ??お城の友達がいってたよ?」
「そうなの!!ナナ情報によると、この前の学祭で初めてバンドやってるのが明らかになったんだって~。ベースがチョーかっこよくてお城の中でも株が上がってるみたい!!」
「でもそいつ、その前まではいつも仏長面で愛想なくてつめた-い感じの奴だったらしいじゃん。ちょっと、目立つことすると人の見方って変わるもんだねー。」
「ちょっとまみちゃん?淳君のことけなすのー??」
「そうじゃないよ。むしろけなすのは周りの女のことさ、それまで魅力がわからないのは節穴ってこと。それにしてもそんなにかっこいいならぜひ見てみたいよね~。」

はあ、本当にビックリした・・・。やっぱ淳君、頭いいんだ・・・。まあ、そんな感じはしてたけどね。

「ねぇ、遼、あそこにいるお城の人かっこよくない?」

遼は麻美子の指す方へ目線をずらした。

「!!!!!!」

思わず遼の足が止まる。

「ン?はるちゃんどーしたの?でもさぁ、あんな感じじゃないかな?淳君・・・。」

菜々の言葉に麻美子があいづちをつく。

「あー・・・、そんな感じー。頭よさげだし。」

その方向にいたのはまさしく話の主役、淳。
やばい・・・、ここでもし淳君がこちらに気づいて話しかけてきたりしたらものすごーく、やっかいなことになる・・・。バンドのこともバレるかもしんないし・・・。
そういえば最後にみんなとあってからもう1週間。あれから淳君も笹山さんも慶ちゃんからすらもなんの連絡もない・・・。なんだかあたしの日常もいつもと変わらない生活がつづいて1週間前のことがウソみたい。あれからなんか進んだのかな?
淳君も作詞できたんだか・・・。

「・・・おーい、遼~?」

ふと我にかえると麻美子が目の前で手を左右に振っていた。

「ん?なっなに?」

麻美子が腕組をしながらため息をつく。

「ちょっとー、どうしちゃったわけー?遼ったら。ここ1週間ぐらいずっと変だよ?なんかいつもボーっとしちゃってさ。」
「あっあはは。ごめん、ごめん本当になんでもないんだ。」
「ならいいんだけど、はるちゃん、さっきの男の子見とれちゃってるんだもん。一目ぼれ??」
「まっさか!あれ?でもさっきの子は?」
「とっくにいっちゃったよ。やっぱ気になる?名前ぐらいきいときゃよかったね。また会えるかなー?」

麻美子の表情が笑顔になって遼は安心した。友達に心配かけるようじゃだめだな・・・。もっとしっかりしなきゃ。

  ・・・・・

カラオケも中盤に差し掛かり、三人で歌うLAXもだいぶサマになってきたころ遼の携帯がなった。ディスプレイには「村上慶介」。

「はーい、遼・・・。」
「あ?ハル?さっき彰くんから連絡きてさ、曲できたっていうから集まれって。
こないだのファミレスこれるか?]
「え?今麻美子たちとカラオケきてるんだけど・・・。」
「そっか、じゃあ、ちょっと代わって?」
「え?」
「いいから!早く。」
「う、うん・・・。はい、麻美子、慶ちゃんから。」

遼は通話中の携帯を麻美子に手渡した。

「へ?なんであたし??」

とまどいながらも受け取る。

「もしもし、お電話代わりました。時田ですけど。」
「あ、麻美ちゃん?楽しんでるとこ悪いんだけどハル、すっごく大事な用でどうしても必要なんだ。帰してもらっちゃっていいかな~?」
「あっはい!わかりました。」
「ごめんね、ホント。」
「いえ!とんでもないですぅ!カラオケなんていつでもできますから!!」

電話だっていうのに麻美子は緊張して頭をペコペコ下げている。

「あとは、菜々ちゃんかな?代わってくれる?」
「あ・・・はい!・・・菜々、はい。」
「え?あたしも?」

菜々は一息ついてから電話を受け取る。

「はい!ナナです!」
「菜々ちゃん?ごめんね、ハル借りていいかな?」
「はい!どうぞ!もってちゃってください!!」
「ありがとう。じゃあ、ハルの奴に早く来いって伝えて。じゃあ、これからもハルのことよろしくね。」
「はい!まかせてください!失礼します・・・。」

菜々はスイッチを切って携帯を遼に手渡した。

「ナナ、慶介さんとおしゃべりすんのチョー緊張しちゃうよ・・・。」
「あたしも。急だったからどうしようかと思っちゃったよ・・・。ところで、遼、慶介さんと大事な用ってなーに??」

二人の顔は興味深々だ・・・。まさか、
デビュー曲の練習に・・・とはいえない。絶対に。

「う~ん、なんだろ?新しい髪形のカットモデルやって?とかじゃないかなー?」
「遼はホントウソのつけない奴だよ・・・。」
「な~に?はるちゃん、ナナたちにも秘密なんて~?」
「まあいいにしよう!そのかわりまた練習付き合ってよね!あたしたちの合格はあんたにかかってるのよ?」
「はいはい、わかった、わかった。じゃあ、ごめんね、また明日。」

合格はあたしにかかってるだなんてオーバーな・・・。自分たちが練習すればそれでいいのに・・・。ドアを開けたが、思わず遼の動きが止まる。

「あ・・・。」

部屋のすぐ脇に女の子が一人、腕を組んで壁に寄りかかっている。
見覚えのあるその姿は一つ年下の中条理沙・・・のように見えるがなんとなく雰囲気が違う。

「あなたね?東高の雪野遼・・・。」

そこまでいうとその子は挑発的な目で遼の前に立ちはばかる。

「そして残りの二人は時田麻美子と大滝菜々・・・だったかしら。こんなところで歌の練習とはご苦労様・・・。でもどうあがいても私たちには勝てないわよ?」
「遼ー?なにやって・・・あー!中条理英(ちゅうじょうりえ)!」

不思議に思った麻美子が二人の間に割ってはいった。
遼が後から顔を出した菜々にたずねる。

「え?理沙ちゃんじゃなくて・・・?」
「はるちゃん知らないの?中条理沙の双子の妹だよ。お城の。」

そういえば髪がふわふわパーマの理沙と違ってサラサラストレートだし、こんなにベラベラしゃべるような子じゃなかったと思う。双子っていうのは知ってたけどまさかこんなにも似てるとは思わなかった。

「やっぱりあなたたちね、オーディション出るっていってるのは。まだ一次の結果もでてないのに練習なんて気が早いんじゃないの?」
「なーによ、あんたには関係ないでしょ?それよりこんなとこで油売ってヒマなのね!人気モデルさん?」
「おあいにく様、今日は仕事なの。雑誌の取材でね。」
「理英・・・。」

理英が得意げに話していると向こうから中条姉、理沙がやってきた。遼たちを気にもせず、理英の服の袖をひっぱりながらいった。

「マネージャーが呼んでる。」
「ちょっと、理沙、こいつらよ?例のオーディションの・・・。」

理英の言葉にちょっとこちらをみてから視線を理英に戻す。

「それよりも、仕事。」

そういうと理沙は袖をつかんだ歩きだした。

「ちょ・・・ちょと。」

引きずられながらも理英は体制を立て直すと一度遼たちのほうへ向き直って不適な笑みを浮かべ廊下のかどへ消えていった。

「・・・中条姉妹、マジむかつくわ~!!ちょっと売れてるからって、あの生意気ようはなんなの??」
「いつも口では負けないまみちゃんが一方的にいわれてたね~。」
「はっそうだ!あたしいかなきゃ!」

なんだか意味がわからなくて圧倒されてしまったが我に帰るといそいで走りだした。それにしてもあの子はいったいなんだったんだろ・・・?
なんであたしたちの名前知ってるのかな?しかもオーディション、あたしもでるんだと勘違いしてるみたいだし・・・。なんでかな・・・?
疑問に思いながらも遼はファミレスへと急いだ。

          vol.6へ・・・。


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